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ドーナッツ経済学が世界を救う

この本を勧められ、以下の書評を見て良い本と思いましたが、高いので迷ってます。



力作だ。朝日新聞の書評では、これほどよくできた本とは分からなかった。題名が良くないのだと感じる。「公正と環境の経済学」とでも呼ぶべきだろう。ドーナツの形そのものが本質的ではなく、社会的な公正と公平の線と、環境を破壊しないという線の上下の線で区切られた範囲が「正しい」経済学の位置だということだ。
形ということでは、本文中でも「コンパス(羅針盤)」という表現があるが、むしろその方がメタフォーとしては適切だろう。ドーナツという食品を思い浮かべるとなんでドーナツ経済学なんだと戸惑ってしまう。
前書きで、21世紀の正しい経済学のための7つの思考法が示されて、それがそのまま本文の7章になっている。そこで、まずは目次:
経済学者になりたいのは誰か?
第1章 目標を変える―GDPからドーナツへ
第2章 全体を見る―自己完結した市場から組み込み型の経済へ
第3章 人間性を育む―合理的経済人から社会的適応人へ
第4章 システムに精通する―機械的均衡からダイナミックな複雑性へ
第5章 分配を設計する―「ふたたび成長率は上向く」から設計による分配へ
第6章 環境再生を創造する―「成長でふたたびきれいになる」から設計による環境再生的経済へ
第7章 成長にこだわらない―成長依存から成長にこだわらない社会へ
今や誰もが経済学者
付録――ドーナツとそのデータ
謝辞
訳者あとがき

著者が強調しているのは、経済学を説明するモデル、図が、経済活動や経済政策がどうあるべきかを規定するということ。だから、その考え方、立ち位置を変えることで、経済活動そのものが変わるということだ。Rethinking Economicsという、学生たちの活動が紹介されている。経済学が、いま世界が必要とすること、学生が学びたいことを扱わず、世界の不公正に加担しているという批判がこういう活動として行われている。
本書では、経済学の現在がどうしてこうなったかという説明と、これから変えるのはどこをどのようにという説明をデータとともに示しているので、結構細かいことがらまで述べられている。
第1章では、GDPがどのようにして導入されたかの経緯を含めて、その歪みを正すために公正な社会基盤を確保して、環境に対して負荷をかけないというドーナツ形の経済の枠組みを提示する。第7章でGDP成長神話がいかに問題をはらんでいるかの説明があるが、GDPだけを経済指標とすることの問題が述べられている。
第2章では、市場が問題になる。第3章の合理的経済人というモデルとも関係するが、「市場が万能」ではないことが論じられる。「マッチを擦る前と同じように、市場を始める前には注意しなくてはならない。何を燃やし尽くし、灰にしてしまうか、わたしたちにはわからないのだから。」とまとめられている。
市場に関して興味深かったのは、ボードゲーム「モノポリー」のお話。「ゲームの開発者エリザベス・マギーは、土地を人類全員の共有財産と考えるヘンリー・ジョージの思想の熱烈な支持者で、1903年に最初にこのゲームを考案したときには、二種類のまったく異なるゲームのルールを用意していた。「繁栄」と名づけられたルールでは、誰かが新しい土地を獲得するたび、すべてのプレーヤーにお金が配られ、元手がもつとも少なかったプレーヤーの資金が二倍になったところで、ゲームの決着がついた(全員が勝者だった)。いつぼう「独占者(モノポリスト)」と名づけられたルールでは、プレーヤーは自分の土地に止まったあわれなプレーヤーから地代や賃料を徴収して、お金を増やした。ゲームの勝者は、ほかのプレーヤーを全員破産させ、最後まで残ったプレーヤーだった。マギーが二種類のルールを設けたのは、「現在の土地の収奪システムからいかに尋常ではない結果や影響がもたらされるかを、プレーヤーたちに具体的に示し」、土地の所有権の扱いかたしだいで、社会にまったく異なる結果が生まれることを理解してもらいたかったからだ。」とある。パーカー・ブラザーズが1930年代に特許を買い取ってから、今の「モノポリー」だけと改変されたという。
市場以外にも、企業:任せる→目的を持たせる。金融:ぜったいに誤らない したがって信頼せよ→利用するものである したがって社会の役に立たせよう。貿易:双方を満足させる したがって国境を開放せよ→諸刃の剣である したがって公平にしよう。国家:無能である したがって干渉させるな→不可欠である したがって責任を明確にしよう。家計:家庭の問題である したがって女たちに任せよ→中核である したがってその貢献を重んじよう。コモンズ:悲劇である したがって売り払え→創造性の源である したがってその可能性を引き出そう。社会:存在しない したがって無視せよ→土台である したがってそのつながりを育もう。地球:無尽蔵である したがって好きなだけ使え→生命を支える したがってその許容限界に配慮しよう。勢力:無関係である したがって問題にするな→どこにでも生じる したがって濫用を防ごう。
と、経済学の要素を組み替える必要を説く。
第3章は、これも悪評高い「合理的経済人」の批判。社会にとって好ましくないこのような人を経済学部が生み出している状況が語られる。
第4章では、経済システムを「均衡理論」から、よりダイナミックな複雑系に切り替えることを説き、「今日の経済は、無策により、分断的かつ非環境再生的である。明日の経済は、設計により、分配的かつ環境再生的なものにしなくてはならない。」とまとめている。経済学者は「機械工から庭師に」というスローガンも用意されている。
第5章は、格差の問題に取り組む。従来の「経済成長すれば格差は解消する」という主張が破綻しているのは、ピケティの「21世紀の資本論」でも明示されているとおりだ。「不平等の解消のため、経済成長が進むのを待つのは止めよう。そうはならないから。代わりに、設計により分配的な経済を築こう。」とまとめられている。
興味深かったのは、コミュニティ通貨とブロックチェーンの組み合わせで、地域振興という観点。仮想通貨をこう把握することもできるのだ。また、オープンソースを引き合いに出して、知的資産のコモンズが語られる。Digital Technologyが勝者総取りの格差拡大だけでなく、共有化の可能性もあるということだ。
第6章では、地球環境の問題を取り上げる。
前提抜きに経済成長を是とする考えには、地球の資源や環境を無尽蔵に好きなように使えるという前提があることが論じられ、さらには、「経済が成長すれば環境もよくなる」という議論がなされる。これに対して、「環境再生的な経済設計に支えられて初めて、環境再生的な産業設計は真に実を結ぶ」と、当初から、環境再生を目指した政策、社会経済環境を整える必要性を説く。ここでは、コモンズの位置づけも従来の無用とするEnclosure以来の考え方を改め、むしろ、コモンズの適切な管理によって、環境再生的な基盤が整備されるとする。asknatureというサイトも紹介されて、知財もまたコモンズを通じて、このような環境保全の文脈で使われるべきだと論じる。
第7章では、今の経済理論の最大の欠陥。経済成長のこの後、どうなるのかを取り上げる。私がこの議論に最初に接したのは、Sutterさんの「経済成長神話の終わり 減成長と日本の希望」だったが、状況はあまり変わっていないようだ。原発ですら最終処分費用が不明でも、ランニングコストが安価などという議論がまかり通るから、いつまでも経済成長を続けることを前提とした政策がまかり通るわけで、まさに、無理が通れば道理が引っ込む状況だ。
経済理論が実社会をまともに扱うなら、GDPの上限があることは自明で、それをクラッシュではなく、まともに扱えるモデル構築が求められるし、そのような中で、GDPに取って代わる、願わくばわかりやすい指標が望まれる。本書の議論を通じて感じたのは、いわゆる「幸福指数」も、人間の狭い了見から来ているように見えることだ。むしろ社会・環境への貢献度、保全度のようなものを用いたほうが良いのではないかと感じる。
付録には、議論の材料となる種々のデータも示されている。「公正と環境の経済学」は、まだ出来上がってはいないが、それを論じるための基礎は、本書でかなりカバーされている。著者が希望しているように、これがこれからの経済学の基本となれば、世の中も少しは良くなると期待されるのだが、さて、どうなるか。
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Author:ムーミン815
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1960年代生まれメタボ系です。ダイエットや精神健康のために腰振り体操、整体体操、気功をやってます。ブログでは、興味のある漫画や本をとりあげています。最近は環境問題に関しても書いています。図表の採用で問題がありましたらコメントください。削除いたします。

写真は20年以上前にボーイスカウトのリーダをやっていたときのものです。今より20kg以上痩せてました。

ヤフーの知恵袋で地球温暖化のカテゴリーマスターをしています。

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